2013年 02月 17日
トホホなアイデア |
デッドストックのペンケース。
当店一番のセールスポイントは
稀少な古いセルロイドの筆箱ですが
後に発売されたポリプロピレンや
ポリカーボネイト製のものもたくさんございます。
セルロイドに比べ柔軟性があって割れにくく
加工しやすいポリプロピレンではありますが
色が素っ気ないのが泣きどころ。
セルロイドのような艶やかな発色はなく
パールやストライプといった地模様も入れられません。
それを補うべく裏側にレリーフを入れたり蓋にイラストを描いたり。
が、それだけでは
移り気な子どもたちのハートをつかみきれなかったのでしょう。
鉛筆削りをつけたり中皿を入れたり
外側から鉛筆を削れるようにしたり
といったアイデアを盛り込むことで
差別化を図った商品が多数発売されましたが
中には 「……?」 なものも。
この「ポケットオープン筆入」も、そんな筆箱のひとつ。
蓋に巻かれた帯には
「近代科学の生んだスピーデーな」とのキャッチが。
スピーディーではなく「スピーデー」というところに
いきなり突っ込んでしまいそうですが、それはさておき。
蓋を開けると裏側にポケットがくっついています。
定規やハサミなどを入れるためのものでしょうか。
金型で抜いた竪琴を弾く男性は
どうやらギリシャ神話のアポロンのようです。
なぜにアポロンなのか? まったく不明です。
中皿はこの頃のポリプロ製の多くがそうであったように
鉛筆のガタつきを抑える帯と溝が入っていますが
なぜか鉛筆の先端が下向き。
誰かが蓋を開けて間違って戻したのかと思いましたが
どれもそうなっているところから見て
最初から下向きにセットされているようです。
との謎に答えるのが底面の扉。
パカッと開くこの扉こそがこの筆箱の最大のウリ
ポケットオープンなのであります。
帯の説明によれば、この扉を開ければ
底面から鉛筆が取り出せるというもので
さらに 「タタケば開かる」(?)とあります。
そこでさっそく鉛筆を入れて試してみたのですが
ちょっと叩いた程度ではダメで
力を入れて何度も叩かなければ開きません。
授業中にバンバン叩いたりしたら先生に叱られそうだし
それ以前にさっさと蓋を開けた方が早いのではないかと思いつつ
開いた扉から鉛筆を取り出そうとしたのですが
幅に対して扉が狭いのでなかなかうまく取り出せません。
「スピーデー」どころか一向に出てこないという
もう笑っちゃうほどのズッコケぶり。
普通ならサンプルが上がった段階で気づくべきところ
思いつくや 「これだ!」 と突っ走ってしまったのか
近代科学が生んだはずのマジックシステムの不発は
子どもたちにもダメ出しをされたことでしょう。
ということだったのかどうか
この筆箱は他のものに混じりいくつかあっただけで
以後、目にしたことがありません。
きっとすぐに廃番になったのではないでしょうか。
ということならつまりは幻の筆箱。
とても稀少なものなんですけど…
by sparrowhouse
| 2013-02-17 14:26
| アンティーク